金星の夜間の大気循環を解明

当研究室の修士課程卒業生の福谷貴一さんが在籍中に実施した研究の成果がNature 誌に掲載され、記者発表を行いました。

詳細:Nature  東京大学新領域創成科学研究科  東京大学理学系研究科

金星には地球では見られない超回転と呼ばれる速い東風が惑星全体にわたって存在しますが、これに加えて、紫外線で観察できる昼間の雲の動きには、赤道から両極へと向かう流れが見られます。しかし、この極向きの流れのうちどれほどがハドレー循環を反映しており、どれほどが熱潮汐波にともなう昼間に特有の風であるのかは、40年来の謎でした。東京大学大学院理学系研究科の修士課程学生であった福谷さん、東京大学大学院新領域創成科学研究科の今村らを中心とする研究グループは、JAXAの金星探査機あかつきで取得した赤外線画像の解析により、金星をおおう雲の運動を昼夜の区別なく可視化することに成功しました。その結果、夜間には昼間とは逆に赤道に向かう流れが生じることが判明し、熱潮汐波の寄与が明確となりました。ここから超回転のメカニズムやハドレー循環の形態の理解も得られました。このように金星の大気環境を維持するしくみを知ることは、惑星が多様な姿に分化するメカニズムの解明や、太陽系外に数多くあると考えられる大気の超回転が生じている惑星の理解につながります。

今回明らかになった金星の雲層付近の循環のイメージ。惑星全体の超回転(赤)に重なるように、昼側では極向きの流れ(水色、右)、夜側では赤道向きの流れ(黄色、左)が卓越している。今回赤外線観測で発見された夜側の赤道向きの流れが、昼側の極向きの流れを相殺している。このような昼夜の流れの違いは熱潮汐波による。昼側の画像は金星探査機あかつきに搭載された紫外カメラUVI、夜側の画像は赤外カメラLIRが撮影したもの。