私たちは大気圏の底で暮らしています。大気の流体としてのダイナミックな振る舞い、宇宙空間・惑星内部との物質とエネルギーの交換、これらがバランスする動的平衡が、惑星の環境形成の要であり、生命圏の成立を左右します。太陽系惑星の大気には驚くべき多様性が見られますが、太陽系の外の惑星はさらに多様です。これらの惑星に共通するメカニズムと地球の特殊性を理解すべく、惑星科学、気象学、天文学が融合しつつあります。当研究室では、探査と理論を両輪として、大気物理学を中心に宇宙における環境形成のメカニズムを追求しています。

惑星の気象の多様な姿

当研究室が力を注いできた日本の金星探査によって、金星に時速400 kmという高速の大気循環が生じるしくみや、硫酸の雲が作られるしくみが明らかになりつつあります。学生の皆さんがデータを解析して新たな現象を次々と発見し、世界における惑星大気科学を牽引しています。また進行中の火星探査計画MMXに中心的に参加するとともに、これまでの火星探査のデータを分析して、砂塵嵐など火星特有の気象のしくみを調べています。当研究室はまた、宇宙機から地球上のアンテナに向けて電波を送信して経路上にある天体の大気を走査する、電波掩蔽という観測手法で世界をリードしています。この手法で惑星や太陽の大気中の波動や乱流をとらえ、惑星大気の循環や、太陽風という超音速のプラズマ流の成因の解明に取り組んでいます。このような観測的研究に加え、物理理論に基づく数値シミュレーションによって惑星大気の変動と構造形成を再現して、惑星大気の多様性の背後に潜む共通原理を追求しています。

観測と理論を武器に分野横断的な科学を切り拓きたい皆さんを歓迎します。

電波掩蔽観測
金星の山岳波(上)や火星のダスト嵐で発生する波動(下)など惑星流体力学の数値シミュレーション

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