金星と木星の雲追跡

当研究室に在籍していた奈良佑亮さんが今年2月に、武藤圭史朗さんが8月に、いずれも惑星大気力学の研究で博士の学位を授与されました。

奈良さんの博士論文は、探査機あかつきやVenus Expressが取得した金星の連続的な雲画像から大規模な大気運動を取り出し、惑星規模の波動の役割を論じたものです。波動が雲の模様を作り、低層の大気と高層の大気の運動を同期させ、高速大気循環の維持に関わりうることが示されました。自ら開発した巧妙な雲追跡アルゴリズムによる成果です。


金星大気における上下力学結合のイメージ。雲層高度の惑星規模の波動が、より小さな波動の鉛直伝播を制御する。

 

武藤さんの博士論文は、連続画像から局所的な雲の回転を抽出する新方法を自ら考案し、これを用いて木星と金星の微細な雲の回転の様子を明らかにして、そのような渦運動と大規模な大気の流れのスケール間相互作用を論じたものです。今後の惑星大気研究における標準的な研究手法の一つになることが期待されます。

探査機Cassiniによる木星画像(上)と画像解析で得られた局所回転速度の分布(下)